四季の憂い…
いま西洋の人々の間では日本の季節のうつろいに趣向が注がれているという。理由は簡単。自分たちの国にいては決して臨むことのできない、遠く離れた国に宿る美へのあこがれがそこにはある。
イタリアに暮らしながらも四季は感じることができる。ただ、日本に比べるとどこか大味なのだろう。というか、一年が夏に集約されているように思われて、それがあるから他の季節の比重が軽くなってしまっているのかもしれない。要するにサイクルのバランスが均一とは言えないイタリアのうつろいなのである。
この欧州の一国は秋が一年のスタートだとわたしは確信している。イタリアの秋はこと短い。夏を満喫した人々は自ずとクールダウンを強いられる。いや、気持ちをリセットしなければならず、まず真夏の祭典への名残りを惜しむ喪失感や虚無感が大方の感情を占める。色を失いはじめた町がオペラの舞台背景のように人々のこころに暗を映すのである。冬への階段をかなりの加速とともに昇っていくのだ。
短い秋も、日常、我々の歩く北の運河には、それなりの色を見せてくれる。木々の多い水路辺りには薄く色づく黄色の葉が秋の光に薄く揺れる。遊歩道の落ち葉はかさかさと音を立ててこの季節特有の香りを風が運んでくる。
冬が近づくにつれてその遊歩道はたちまち色を失いモノトーンに覆われる。歩き人、走り人それぞれのコスチュームが厚手のものに変わり、色合いのある季節に比べるとかなり鈍重な趣きがついてくる。このような石の文化に占められた町には、案外モノトーンは似合っているように感じるわたしなので嫌いではないのだが、イタリア人のイメージとはどこかかけ離れて見える。
運河を寒い時期に歩くことも嫌いではない。冬の朝の起床を苦手としているわたしにとって一日の第一歩を踏み出すことにはかなり勇気を伴うが、しかし、運動の中で上がっていく体温を感じることに“生”を感じることも事実、すれ違う人々との何気ない挨拶にさらなる暖を得ることになる。
春の朝は単純に新しい夜明けを感じる。様々な花々、とくに日本と等しく桜花が咲き誇り、すれ違う人々の表情からもこわばりが消えて穏やかにそれぞれの希望が伝わってくるようである。これからやってくる最高の季節へ向かう希望の色である。
石の文化とともにあるイタリアの四季を歩くことは、日本のような整然とした季節区分を持たないまでも、それなりの歓びを見出すことができる。すべてが夏へと向かうベクトルに乗じて熱く強く生きている証である。
年末年始を至福の音楽で迎える夢のひととき。
2021年は巨匠リッカルド・ムーティの指揮で華やかに幕が開きます。
本旅行での鑑賞公演
■ ウィーン・フィルニューイヤーコンサート
1月1日(金)11:15開演 楽友協会(大ホール)
指揮:R.ムーティ
演奏:ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
※曲目は未定
別途手配鑑賞公演のご案内
*旅行代金に含まれるウィーン・フィル ニューイヤーコンサート鑑賞チケットの他、さらに鑑賞ご希望の方には、下記公演のチケット手配を承ります。(別料金)
◆ フンパーディンク《ヘンゼルとグレーテル》
12月30日(水)19:00開演(予定)、1月2日(土)19:00開演(予定)/7日間コースのみ
ウィーン国立歌劇場
指揮:C.マイスター
演出:A.ノーブル
出演:S.ヴェレス、V=L.ベッカー、B.ダニエル、R.ハングラー、M.ボヒネクほか
1月2日(土)14:00開演(予定)/7日間コースのみ
ウィーン国立歌劇場
指揮:C.マイスター
演出:O.シェンク
出演:V.ヴェレーズ、S.ザクナイコーヴァ、C.ウンターライナー、S.ハウツィール、 T.エベンシュタインほか
◆ J.シュトラウス《こうもり》
12月31日(木)19:00開演(予定)、1月1日(金)20:00開演(予定)
ウィーン国立歌劇場
指揮:C.マイスター
演出:O.シェンク
出演:G.ニグル、C.ニールンド、J.シュメッケンベッヒャー、R.ミューレマン、C.ボック、M.ラウレンツ、M.へスラー、P.シモニスチェクほか
◆ ベートーヴェン《交響曲第9番 ニ短調「合唱つき」》
12月30日(水)20:00開演、12月31日(木)19:00開演、1月1日(金)20:00開演
コンツェルト・ハウス(大ホール)
指揮:M.ホーネック
ソリスト:S.シャトゥロヴァー、M.H.ラインホルト、 M.シュミット、T.ナズミ
◆ ラモー《プラテー》
12月31日(木)19:00開演 アン・デア・ウィーン劇場
指揮:W.クリスティ、R.カーセン
出演:M.ベークマン、J.d.ビケ、C.オヴィティ、M.モイヨン、E.C=マーサーほか
◆ J.シュトラウス《こうもり》
12月31日(木)19:00開演、1月1日(金)19:00開演
フォルクス・オパー
演出:H.ツェドニク
※指揮・出演者は未発表
◆ バレエ《コッペリア》
1月2日(土)18:00開演/7日間コースのみ フォルクス・オパー
振付:振付:P.ラコット(A.S.=レオン原振付)
音楽:レオ・ドリーブ
※出演者は未発表
※記載の指揮・出演者等は現段階での発表のものです。事前の予告なく出演者等が変更となる場合がございます。変更が生じた場合でも旅行代金の返金はいたしかねますので、予めご了承ください。
※新型コロナウイルス感染症対策のため一部座席が制限されて配置される可能性があります。
6日間コース
旅行期間:2020年12月29日(火)~2021年1月4日(月)
7日間コース
旅行期間:2020年12月29日(火)~2021年1月4日(月)
音楽・美術ツアーのブログでは、ご自宅で海外をお楽しみいただける「バーチャル体験」をご紹介中です。
ドレスデン国立歌劇場(ゼンパー・オパ―)やミラノ・スカラ座などのオペラハウスや、メトロポリタン美術館などの観光箇所などを掲載しております。
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